手に入らないから余計に欲しくなる
子どもの頃、欲しいものがたくさんあった。しかし、親の教育方針からか、その多くは手に入らなかった。だから親にたまに買ってもらったものは格別の輝きを持って僕の前に現れた。買ってもらえた漫画の本は何度も何度も読み返した。サーベルタイガーのゾイドを買ってもらって箱を触ったときの感触は今でも思い出せる。
そして、大人になり、自分で欲しいものは何でも買えるようになった。しかし、車を買っても最新のスマホを買っても子どものころに味わった震えるような喜びがない。
そして今年、子どものときに味わった、ものを手に入れたときの喜びを味わえるチャンスが巡ってきた。それは将棋棋士の羽生善治さんが署名した初段の免状だ。羽生さんはたぶん将棋がこの世からなくなるまで語りつがれる人物だ。その羽生さんの直筆の免状が少なくとも次の竜王戦の結果がでるまで、手に入るチャンスがある。段位の免状にはときの名人と竜王の署名が入るのだ。今年の12月に竜王線に勝って永世七冠になった羽生さんの署名は少なくとも次の竜王戦の結果が出るまで入るはずだ。
当たり前だが、この免状は、ただお金を出せば手に入るものでなく、将棋の実力が認めてもらえないとな手に入らない。
子どものころ欲しかったものが手に入らなかったのはお金の問題だが、この免状に関しては実力がないともらえないし、羽生さんの免状については、彼が名人か竜王の間でしか手に入らない。その制約こそが僕を駆り立てる。
今のところ僕の実力が不足しているので簡単には手に入らないが、これからは将棋に時間をさいて、羽生さんの免状を手に入れる決意だ。そのために今まで読書していた時間を将棋に当てるようにする。
羽生さんの年齢からも今年と来年が最期のチャンスかも知れないので、悔いが残らないようにがんばる。こんなにわくわくするのは久しぶりだ。